犬の感染症の中には命に関わる病気があったり、後遺症が残ったりするものがあります。
狂犬病予防接種は毎年受けることが法律で義務付けられていますが、その他のワクチンに関しては飼い主さんの任意となっています。
混合ワクチンの接種は必要なのでしょうか?
病気にかかるリスクを考えればワクチンの接種はしておいたほうがいいと思います。
今回はワクチンによって防げる病気やワクチンの時期などについて詳しく見ていきましょう。
犬の混合ワクチンの必要性
ラブラドールと一緒に楽しい生活を送るために必要なことは何よりも健康な体です。
予防接種は病気にならないようにするために、もしなったとしても重症にならないようにするために必要なことです。
ワクチンを接種することで体に免疫をつけることができ病気の感染を予防します。
多くの犬が集まるドッグランやペットホテルを利用するときにも、予防接種を受けていることが条件になることが大半です。
犬から犬だけでなく、犬から人間への感染を防止するためにもワクチンの接種は必要になります。
混合ワクチン接種を受けるか受けないかは飼い主さん次第です。
愛犬の行動範囲などをよく考えて判断していくといいでしょう。
狂犬病ワクチンの予防接種
生後90日を過ぎた犬は、年に1回の狂犬病予防接種を受けることを法律で義務付けられています。
「狂犬病」とは、感染している犬に噛まれることで、唾液の中にいるウイルスが傷口から侵入し、人間を含めすべての哺乳類に感染する危険な病気です。
症状は中枢神経に作用して全身を麻痺させます。
治療法がないため発症すればほぼ100%の確率で死亡します。
日本では1957年に犬の狂犬病発生が確認されていますが、それ以降は見つかっていません。
しかし、中国や東南アジアでは毎年100人以上が狂犬病で亡くなっています。
日本で発生が確認されていなくても海外から感染する危険性があります。
毎年春になると各地域の自治体による集団接種か動物病院での個別接種が実施されます。
実施期間は4月~6月で飼い主さんのもとに案内状が送られてきます。
犬や人間を守るために年に1回の予防接種は必ず受けるようにしましょう。
混合ワクチン接種の時期
生まれたての子犬の場合には、最低でも生後50日間は母犬のもとで過ごし、生後50~60日ころに1回目のワクチンを接種するようにします。
母犬から離すのはワクチンを接種してから1週間以上たってからがいいでしょう。
子犬は母犬から母乳である程度の免疫を受け継いでいます。
この移行免疫が効いている期間は病気に対する抵抗力を持っています。
しかし生後50日頃から長くて100日くらいで免疫抗体はなくなっていきます。
そのためワクチンは生後50日頃に1回目を打ちます。
しかしワクチンを接種することで、もともとあった移行免疫の効果も打ち消してしまうため、数回に分けてワクチンの接種をする必要があります。
2回目のワクチン接種は1回目の接種から3週間後にします。
3回目は生後3か月を過ぎた時期に受けるのが理想です。
生後3か月を過ぎるとほぼ免疫システムが確立していきます。
狂犬病と混合ワクチンとの間隔やスケジュールは
狂犬病ワクチンと混合ワクチンの接種する順番ですが、どちらが先という決まりは特にありません。
- 狂犬病ワクチンを打った後は1週間以上あけて混合ワクチンを打つ
- 混合ワクチンを打った後は4週間以上あけて狂犬病ワクチンを打つ
子犬の場合は通常全ての混合ワクチンのスケジュールが終了してから、4週間後に狂犬病ワクチンを接種するのがいいでしょう。
犬のワクチン予防接種にかかる費用
狂犬病予防接種の費用は
- 初回は登録費用も含め6,000円~7,000円くらい。
- 2回目以降は3,000円~4,000円程度です。
混合ワクチンの費用は主に5種と7種があります。
動物病院によって違いますが
- 5種は5,000円~7,000円くらい。
- 7種は8,000円~9,000円くらいです。
ちなみにワクチン接種は予防医療になるためペット保険の保障は対象外となります。
混合ワクチンで予防できる感染症の種類
ジステンパー
感染した犬の唾液、鼻水、排泄物などに含まれるウイルスに触れることで移ります。
発熱や目やに、鼻水など風邪によく似た症状が表れます。
進行すると神経がおかされ痙攣などの症状が出て死亡するケースもあります。
犬伝染性肝炎
移ると1週間の潜伏期間をもって高熱を発症します。
感染した犬の鼻水、唾液、排泄物などから移ります。
軽い症状から重篤な症状まであり、他の伝染病との合併や子犬に多い劇症型では死亡することもあります。
パルボウイルス感染症
突然激しい嘔吐があり下痢を繰り返し脱水症状を起こします。
症状は胃の粘膜がただれる消化器型と急性心不全になる心筋炎型があります。
子犬が感染すると致死率が高くなります。
レプストピラ症(カニコーラ型と黄疸方型)
感染するとひどい嘔吐や下痢が続き、血便などの症状が見られます。
悪化すると腎炎になり尿毒症を起こして死に至ることもあります。
パラインフルエンザ
気温の変化が激しい季節に多くうつると激しい咳が出ます。
咳だけの場合と食欲不振や元気がなくなる重篤な場合があり、合併症になると死亡することもあります。
コロナウイルス
病原性は弱く、成犬の場合は感染してもほとんど症状はありませんが、他の腸炎を引き起こすウイルスに複合感染すると重篤なケースになることもあります。
アデノウイルスⅡ型感染症
アデノウイルスが気管に感染して咳やくしゃみなど風邪に似た症状が出ます。
「犬伝染性喉頭気管炎」とも言われ、I型(犬伝染性肝炎)よりも症状が軽く致死率も低いといわれています。
他のウイルスや細菌が二次的に合併感染をして、激しい咳が出て重篤化する場合があります。
犬のワクチン接種後に起こる副作用
ワクチンによる副作用(副反応)が起こることも少なからずあります。
混合ワクチンを接種してから48時間以内に起こることが多く
- 顔が腫れたり、身体に発疹が出て痒みが出たり、嘔吐することがあります。
- 一時的に熱が出たり、食欲や元気がなくなることがあります。
- 接種した皮膚に炎症が起きて痛みが出たり、しこりができることもあります。
危険なのはアナフィラキシーショックで血圧の低下、呼吸困難、嘔吐、痙攣、失神などすぐに対処しなければ死亡する恐れがあります。
多くの場合アナフィラキシーショックは接種後1時間以内に出ていて、その他の症状は接種後4時間~3日以内にでているようです。
ワクチン接種をする場合には、副反応のことも考えてなるべく早い午前中に受けて、問題が起きても午後に対応してもらえるようにしておきましょう。
ワクチンの接種後は3日間は安静にして様子を見ることです。
接種後は運動や興奮させることを避けて、副反応の症状が出たらすぐに病院に行くようにしてください。
ワクチン接種後のシャンプーは1週間くらいたってからするほうが安心です。
混合ワクチンは種類が増えるほど副作用のリスクが高まります。
狂犬病ワクチンと比較しても混合ワクチンの方が副作用の出る率は高いようです。
とはいえ副作用の発生率は0.6%ほどです。
そのうちの多くは皮膚疾患です。
副作用が完全になくなることはありませんが、ワクチンをしなければ感染症にかかるリスクを負うことになります。
医療というものは少なからずリスクをともなうものです。
愛犬のことをよく考えたうえで判断するようにしましょう。
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